三島屋変調百物語事続 あんじゅう

あんじゅう―三島屋変調百物語事続
 2巻目でまだ9話! これが百話続いたらすごいなあ、と思いますが、そうなるとおちかがお嫁にいけないか。
 「逃げ水」「暗獣」は、もののけと人間との暖かかったり、切なかったりする交流を描いたもの。「藪から千本」「吠える仏」は、人の心の闇から生まれた怪異を描いたもの。全ページに南伸坊さんの挿絵がついていて、大変贅沢な作りです。
お旱さんやくろすけの可愛らしさは、ズルイー、反則だよーと思ってしまいました。というのも、今回は「逃げ水」が話として一番まとまっていたけれど、他の話は、もう少し練ってもいいように思えたからです。
特に「吠える仏」は、長編でやるべき材料だったんじゃないかと…。富一が里にどのように迷惑をかけたか、「返し作」を村人がどのように受け入れていったのかを、もっと具体的にじっくり書いた方が、怖さが増すと思うんですよね。そういうブラックなのは現代物でやるから、さらっと流しちゃったのかなあ。
ただ、こう感じてしまうのは、私自身が無意識に規定している「短編集は一つ一つが同程度の長さであるべきである」というルールに囚われすぎているせいかも、とも思います。