嵐が丘(上)(下)

嵐が丘〈上〉 (光文社古典新訳文庫)  嵐が丘〈下〉 (光文社古典新訳文庫)
 面白すぎて、一気に読んでしまいました。古典がこんなに読みやすくていいのでしょうか。
 キミたち、思ったことをそのまま口に出し過ぎ! もう少し空気を読んで発言を控えようよ! と何度突っ込んだことか。でも、なんとなく、だんだんと清々しい気分になってきたんですよね。現代日本社会では、こんなふうに感情の赴くままに罵倒、嘲笑することなど考えられない分、「嵐が丘」の登場人物達がむき出しの魂で激しくぶつかり合っているのを見ていると、カタルシスが得られます。「嵐が丘」を読んでスカッとする人間て、フラストレーションたまってそうだなあ(ひとごとのように)。
 作中では例外的な、冷静沈着な常識人のネリーですら、かなりぽんぽんと言いたい放題なのですが、彼女の的確な突っ込みがあればこそ、野性児だらけのこの長編をストレスなく読み進めていけたのだと思います。まあ、ネリー視点なので、多少自己弁護が入って美化されているんだろうなというナナメ読みもできるんですが。
 冒頭でリントンがキャシー(娘)と結婚していることがわかっているので、下巻はどうなることかとハラハラしっぱなしでした。リントンは本当に嫌なヤツなんだけど、ヒースクリフが監禁した時に、一瞬だけキャシーを見逃してあげたりするところで、すごく人間味が出ていてよかったなあ。その後、すぐにダメ男に逆戻りするところもリアリティがありました。
 ラストシーンは、ずいぶん意味深長な終わりかたで、どのように解釈したらいいのか戸惑います。ヒースクリフは、キャサリン(母)の亡霊につかまって、永遠に二人で煉獄をさまようことになったんでしょうか。

夢のような幸福 (新潮文庫) ガラスの仮面 (第4巻) (白泉社文庫) ガラスの仮面 (第5巻) (白泉社文庫) 
嵐が丘」を読んだら、無性に再読したくなって…。三浦しをんはキャサリン(母)を、世の中がよく見えている賢い女ととらえているようですが、私には、自分に都合のいいようにしか物事を解釈しない自分勝手な人間にしか見えませんでしたー。