山魔の如き嗤うもの

山魔の如き嗤うもの (ミステリー・リーグ)
 「事件をなんとなく解決している」というフレーズが、ツボにはまって出てくるたびにくすくす笑ってしまった。どちらかというと、「なんとなく解決できてない」んじゃ…? と突っ込みながら。推理が二転三転するので、最終的に出た結論も、ほんとにホントに正しいのか、不安になっちゃうんだよなあ。これで矛盾ないの? あってるの? ミステリーの探偵には、いつも騙された気分になるけれど、刀城は「騙された」というより、一緒に途方に暮れてしまう感じがする。
 「如きもの」に出てくる(あるいは「出てこない」)魔物は、妖怪でも幽霊でもない。一応名前は付いているけれども、名付けられる前の禍禍しい「モノ」の気配を濃厚に漂わせているから、イメージがはっきりしている「妖怪」「幽霊」とは全然違うんだよね。過去の幽霊についてさえ、理屈をつけて筋を通そう、という作風にもかかわらず、肝心の「魔」に関しては、「なんだかよくわからないけど、こわいもの」というスタンスが守られているのが、この作品の魅力の一つだなあ。