やなぎみわ−婆々娘々 国立国際美術館

 巨大な乳房を露わに、たくましい足で大地にそそり立つ女性の写真が鮮烈で、通りすぎることができませんでした。
 モデルに理想の老後を語らせて、それを写真に撮るという「グランドマザー」シリーズは、どれもどこかで見たような「物語」ではありますが、チープでキッチュな設定の魅力を存分に引き出した美術家の想像力に圧倒されます。終末後の世界で孫たちを見守る巫女、後継者を探して少女たちの未来を占い続ける占い師、深紅の衣装をまとった等身大の墓石など。
 どの写真も、若い女性が「老婆」に扮しているのですが、老いた女性が「若い女」に扮することはできないんですよね。作者もまだ「老人」というにはほど遠いし、見ている私もそうです。会場には、腰の曲がったおばあさんもいましたが、本当に老いた人はあれらの作品群をどんなふうに見るのでしょうか。