江戸の妖怪革命

江戸の妖怪革命
 明日行く予定の「妖怪天国ニッポン!」(京都国際マンガミュージアム)の予習のために、長らく積ん読しておいた本書をようやく読了。文化人類学の抽象的な分析はちんぷんかんぷんでしたが、昔話や説話世界の「妖怪」と、水木しげるワールド的「妖怪」の間にある違和感を、江戸時代の黄草子やおもちゃ絵などを元に日本人の思想転換として読み解いた大まかな流れは掴めたと思います。概要は知っていましたが、文献や当時の社会状況など具体例を挙げつつ丁寧に論考してあって、改めて納得しました。特に、江戸時代、「遊び」の対象として相対化された妖怪が、近代において「私」という得体の知れないものの内面に棲みつくことで、再び「不気味なもの」として認識されるようになったという第六章の指摘は秀逸だと思います。「私」だから、現代の妖怪は「可愛く」「きれいで」「親しまれるもの」でなくてはいけないんですね。