図書館の女王を探して

図書館の女王を捜して
 妻を亡くして失意の底にある男が受けた奇妙な依頼。絵のモデルになって欲しいという女性が切り出したのは、あなたには自分の夫が霊となって憑依しているという信じられない話だった…。「守護霊」とか「霊能者」という単語が、何のてらいもなく出てくるのでとまどってしまいますが、ここはオリヴァー・デイヴィス氏の説はいったん忘れて、作品世界をそのまま受け入れてしまった方が吉のようです。
 図書館が登場人物たちをつなぐ舞台となっているため、作中の随所に文学作品のタイトルが登場します。それが、教科書に載っているような有名作品ばかりで、言ってしまえば非常に俗っぽいなあと思いました(上記の心霊用語にも、そういう「俗っぽさ」が表れています)。作中で主人公が読んでいる文学全集に載っている作品なのかとも思いましたが、それにしては「新選組血風録」や日本昔話も出てくるのが謎。
 ただ、浮世離れした登場人物のおかげで、奇妙なユーモアと浮遊感が醸し出されていてバランスが取れています。特に、亡くなった奥様が小悪魔的な魅力のある女性だったことが伺えて、いい味を出していました。
 しおり、子犬、キス…としばしば登場する小道具が、最後きれいに「蝶」でまとまったところは素直に感動しました。