恋文の技術

恋文の技術
 作者が同名で登場すると、どうにも純粋に作品を楽しみづらいなあ、と思っていたのですが、最後の方にはちょっとした仕掛けがあって、筆を執って手紙を書くって楽しいだろうな、という気持ちになりました。妹さんが言うように、手紙をやりとりしてくれる友人知人がこんなにたくさんいるということが、主人公の人柄を忍ばせますね。文章に書かれたこと以外の所から、登場人物がどんな人か分かる仕掛けというのはなかなかに高度なテクニックであろうと思うのです。
 前作の「美女と竹林」と似た感じだなーと思いつつも、「不気味な恋文」というフレーズがなぜがツボに入って笑い転げてしまい、そうなると「俺は恋文が書きたいのであって、濃い文が書きたいわけではないのであります」というオヤジギャグにまで笑ってしまい、たいそう悔しい思いをしたのでありました。