ひとり百物語

ひとり百物語 怪談実話集 (幽ブックス)
 フェミニンな表紙に騙されて風呂場本として読み始めたら、湯船から出られなくなって困りました。怖い本て、途中で読むのをやめると実際に怖いことが起こりそうな気がして、ページをめくる手を止められないのです。だから、怖そうな本は、人のたくさんいる電車の中とか、寝る前に読むようにしているのに!
 ひとつひとつは短いお話が、著者の体験としてひとつながりになっていくのは、他人の体験談を集めた『新耳袋』や『百物語』『怖い本』とはちがった味わいがあります。語られる内容に矛盾がないので、立原という友だちから、長い時間をかけて実際に話をしてもらったような気分になります。
 容赦なく怖い話も多いのですが、優しい家族や、飼っていた愛犬のことなど、ほっこりと心温まる話があって、緩衝材になっています。家族を心から愛した父親と、なくなってからも家族を守り続ける健気な犬たち。その気配を感じられる著者が羨ましくなりました。