天山の巫女ソニン4夢の白鷺

天山の巫女ソニン(4) 夢の白鷺
 う〜ん、やっぱり全体的に「甘い」のかもしれないけど、このシリーズの雰囲気好きだなあ。副題にだけテーマカラーを入れる装幀もステキ。
 4巻目ということでこれまでソニンが出会った三国の王子王女が江南の地で邂逅します。巨山のイェラ王女、江南のクワン王子はおそらくこれからさまざまな障害をはねのけて自国の頂点に立つのでしょうが、イウォル王子だけは王位継承の争いからは離れたところにいます。そのイウォルに仕えるソニンを権力者の道を選んだふたりがそばに置きたがる「何か」はまだ作中でははっきりとは示されないんですね。読者には、なんとなく分かるんだけどうまく言葉にできないというか…。
 この巻でソニンは夢見の力を完全に失ってしまったことを自覚します。感情や欲望など「普通の人」としての心を持つようになったソニンが、王子王女が惹かれる「何か」を持ったまま成長してゆくのか、作者がどうこの物語を締めくくるのか、ますます楽しみになってきました。ソニンの夢見の力が、本当に失われたかも分かりません。1巻で大巫女にもなれる才能と予言されたのが伏線だとすれば、そのうちまた目覚めるかもしれませんし、このまま「普通の人」としてがんばるのでも面白いと思っています。
 この作品の作風は、優しく、理性的で穏やかというソニンの人柄そのままです。その中で、1巻で死んだレンヒは、自分の肉体を駆使してのし上がったという負の側面をはっきりと出している「毒」なんですが、彼女がソニンにとって忘れがたく影響を及ぼし続ける人物だという設定がうまいといつも思いますね。