035カスピアン王子のつのぶえ

カスピアン王子のつのぶえ―ナルニア国ものがたり〈2〉 (岩波少年文庫)
 てーんきてんくろうっ♪((c)パンツぱんくろうの節で)
 しかし、今回のネーミング大賞は彼ではなくて、オチ・カこと「お小さい方」トランプキンです。トオリヌケ・キ((c)石井桃子くまのプーさん)みたいなものか。見たものじゃないと信じない超現実主義者の彼と、とりあえず行動してみるニカブリクの運命が分かれたのが哀しかったです。ふたりは友人だったんだろうに。裏切りを描いておいて、カスピアンにああ言わせる所が、古典として読み継がれる懐の深さかと思いました。
 王宮の陰謀や戦場の駆け引きなどが出てきて、物語の雰囲気がぐっと大人っぽくなりました。噂のリーピチープ卿も登場。職場で彼の話をする度に、「ピーチリープ? チーピリープ?」とやるのはすでにネタです。ピーピキークといい、名誉ある彼の一族の名は覚えにくいな! この勇敢なねずみ族が「ものいうけもの」になったのが、1巻での出来事が元になっていたり、アスランが癒した老婦人が実は…だったり、伏線が回収される気持ちよさと言ったらないです。海の向こうに消えた7人の騎士のその後とかもそのうち出てくるのかなあ。
 前作でもそうだったけど、アスランが現れて閉ざされていた世界が開かれていく開放感が好きです。蘇ったもとナルニアの住人たちがテルマールの町を練り歩くシーンは、一面説教くさいと言ってもいいのに朗らかな楽しさに溢れています。木々たちが劣勢のもとナルニア軍に合流して形勢が一気に逆転するところは、「指輪物語」のアイゼンガルドの戦いを彷彿とさせました。ヨーロッパの(イギリスの?)人々が持つ森に対する畏れと親しみの現れなんでしょうか。

地上で最も偉大な皇帝をさえ、ふかくおじぎさせるほど、恥を知るもの、人間というものだよ。