武士道セブンティーン

武士道セブンティーン
 『武士道シックスティーン』の続編。前回は剣道一直線の磯山香織ちゃんでしたが、今回はお気楽不動心の甲本早苗が壁にぶちあたります。九州の剣道強豪校に転校して、指導法や部の雰囲気になじめないことをきっかけに、剣道をする自分を見つめなおすという、真っ向勝負の青春成長小説はあいかわらずでした。
 早苗は図らずも「シックスティーン」の香織と同じ、「何のために剣道をするのか」という問いをつうじて自分の「武士道」を手探りしていきます。この時に、早苗に指針を示す吉野先生が、なんとも強烈でおもしろい人でした。指導方法はめちゃくちゃですし、何が言いたいのか分かりにくいし、香織ちゃんが「気が合うかも」と思う程の人ですから、一筋縄では行きません。登場シーンは少ないのに、インパクト強すぎ。「エイティーン」ではさらなる活躍を望みます。吉野先生に限らず、香織の師匠の桐谷先生や顧問の小泉先生など、この作品では「指導者」の立場の大人がバラエティーにとんでいていいですね。
 前回やや物足りなかった剣道シーンですが、だんだんと迫力が出てきて試合が楽しみになってきました。試合じゃありませんが、香織、早苗双方の木刀での戦いは剣豪時代小説もかくやという緊迫感で、かっこよかったです。

「…安心しろ。命まではとりはしない」