幽 怪談の宴 第1部「京都怪談」第2部「怪談の鉄人」 東映太秦映画村

 先週の暑さが嘘のような涼しさの京都は雨もよいの空の下、怪談を聞きに10年ぶりくらいの映画村に行ってきました。
 映画村は夏休み中、妖怪まつりでいろいろやっているようで、チンチン電車が鬼太郎に出てくる幽霊電車に変わっていたり、ラーメン屋のメニューに目玉の親父と鬼太郎セットがあったりとなかなか楽しい。幽霊電車は、行先もちゃんと「地獄行き」になっていて、幽霊電車の提灯がぶら下がってました。ラーメン屋のセットはこんなん。
 江戸の町並みセットでは、角川やメディアファクトリー、京都の妖怪商店街として名高い大将軍商店街などが物販を行っていて、こちらも賑やかでした。どの店も売り子さんがやたらとハイテンションで、冷やかしてるだけでこちらも元気になってくるような…。気分が盛り上がってきたので、妖怪ストリートの妖怪扇子と妖怪手ぬぐい、「幽」特製手ぬぐいを(自分用の)お土産に買いました。書籍類は、雨が降っていたので見送りましたが、傘が邪魔でなければ、もっとゆっくり見られたのに、残念です。加門七海さんや森山東さん、多田克己さんなど作家さんたちがその辺をうろうろして、サインしたり買い物していて、それも嬉しい。
 そして、第1部「京都怪談」は、司会東雅夫、ゲスト綾辻行人、中山市朗、加門七海森山東の私的にニコニコのラインナップです。全然見ないし、信じてもいない綾辻さんは、綾辻怪談理論「自分が妖しいものを見たことがないのは、怖すぎて記憶が残っていないせい」と話していました。綾辻さんは「記憶」というものによほど思い入れがあるようです。綾辻作品に見られる、彼我の境界が記憶の混濁によって溶けていくような感覚が、私は苦手で、『深泥丘綺譚』も読んでいないんですよね…。
 京都在住の綾辻さんの話から、京都の有名な怪奇スポットの話を振られて、早速エンジンのかかる中山市朗氏は、撮影所とお寺のザシキワラシの怪談を披露。セットを組み直すたびに、地中から出てくるおびただしい数の地蔵の供養塔がある撮影所の話がよかったです。地面に元からたくさん地蔵が埋まっているのも怖いですが、何度掘ってもそのたびに出てくるというのが、どこかからかわいて出ているような気がして。お寺に出るザシキワラシの話も、かわいかったです。妖怪の話は、微笑ましいのにどこか不気味、というか実際に自分が体験したら間違いなく怖いだろう、というのがあるので、とても好き。そして打てば響くように加門七海さんも、自分のザシキワラシ体験を話し始める…。
 加門七海さんは、上七軒の井戸のあるお座敷の話。押入れの中に井戸があるのをかたくなに否定するおかみさん。怪奇現象は何も起こっていないのに、なぜか惻々と怖いのは、さすがでした。
 そして、他にも上七軒の井戸の話をはじめる森山東さん。古い建物に井戸があるのはいいとして、なぜ上七軒にはそんなにも家の中に井戸があるのか。仏壇の隣にあるとか、家の床下から出てきたとか、家を取り壊したら、井戸があって、そこから夜になると人が出てくるとか(!)。そしてそういう話を、聞き出すのに苦労しているのが、いかにも京都らしいと思います。チラッと言っておいて「話せません」って、すごくいけずなところが京都だし、お茶屋さんらしいです。お化け屋敷でお店を開くのに、三日間炊き出しをして、振る舞いと一緒にお化けもお客に持って帰ってもらったっていうのがもうねえ。
 看板に偽りなしの、京都を満喫できる怪談話で、1時間があっという間でした。
 第2部は「怪談の鉄人」、司会は東雅夫、ゲストは京極夏彦福澤徹三平山夢明木原浩勝です。第1部より第2部の方が人出がすごかったのは京極夏彦効果でしょうか。舞台は、京極夏彦の朗読から幕が開きました。この日のために一般から応募した京都を舞台にした奇妙な話を京極氏が朗読します。さすがに声優もやっているだけあって(笑)、朗々と響く美声に引き込まれました。
 福澤さんは古いマンションに住んだ若夫婦の話をしていましたが、ここでうっかり寝てしまって…。次の木原さんが峠にでる赤い女の話をし始めて目が覚めました。しまった…。木原さんの語りも「新耳袋」で培っただけあって、中山さんと比べて淡々としゃべっているようですが、ちゃんと怖い。
 次の平山夢明さんの語りは、はじめて聞いたのですが、究極の怖い話をする人は、人を笑わせるのも上手、というセオリーに乗っ取って、めちゃくちゃ会場をわかせていました。若い女性向け雑誌の編集部にでる女の幽霊。テレビの音が勝手に大きくなったり小さくなったりするので、ベランダを見たら、リモコンを持った男が立ってたという、実在する人物によるぞっとする行為(あー、やだやだ。書いてて思わずベランダを振り返っちゃった)。そして、『怖い話』に書いてあった「よりちゃん」の詳しい話がとても面白かったです。世の中には、瑕疵物件専用の斡旋サイトなんかがあるんですね。麻布十番で家賃10万円のマンションを借りたら、ホステスの幽霊がすんでいて、「おかえり」と言われたとか、うたた寝しながらトレーナーを探したら、女の髪の毛が手に触ったとか、もーなんでそんなとこに住むかな。幽霊が出ると身体の色が変わるカメレオンのよりちゃんは、緑色から十円玉みたいな茶色に変わるのが合図なんだそうです。こういう話を、平山さんは、ちょっとこの人頭のねじのどっかとんでんじゃないのと心配になるくらい実に嬉しそうにお話ししていました。登場時からテンションの高い人だなあ、と思っていましたが、話している内容と場にそぐわないくらい明るくて、それはそれで怖かったです。平山さんの絶妙の自分ツッコミに、場内は爆笑でしたが、おしまいに一言「帰ったら怖くなるんだよ…」いらんことを! ええ、怖いですとも、今。
 残念ながら小雨が降っていたので、妖怪パレードは中央広場になりました。思っていたより気合いの入ったコスプレ…というかすでに被り物、着ぐるみの領域に達した一条妖怪ストリートの皆さんが鬼太郎の「妖怪音頭」にあわせて躍りまくる! やー、もう楽しいですね。二口女のお姉さんがとっても美人でした。
お客さんにも妖怪っぽい服装をしている人が多くて、特に猫娘らしい赤いワンピースをきた5,6歳くらいの女の子がいて、ものすごく激写したかったです、がまんしました。弟はねずみ男のつなぎを着ていて、大入道におびえて泣いていました。あー、デジカメ持ってくればよかったなあ。写真を撮る習慣がないので、すぐ忘れるんですよね。次携帯を買い換えるときは、カメラ機能が充実したやつにしようと決意しました。
 明日の世界妖怪会議には残念ながら行けませんが、映画村妖怪まつり、満喫しました。