天顕祭

天顕祭 (New COMICS)
 帯の上橋菜穂子の讃に釣られてジャケ買いした。表紙の人物の眼差しの強さは、まぎれもなく上橋さんの作品に通じるものでした。
 旧い祭りの風習、職人たちのしきたり、閉鎖的な村…濃厚な「和」の雰囲気をかもしながらも、これは近未来のお話です。大戦後、汚染された世界を「竹」が浄化していくという設定は、「風の谷のナウシカ」を思わせますが、登場する姫君は、人の「母」たるナウシカとは違い、強制される「女」という役割に命がけであらがおうとする「少女」です。少女を生贄にする風習の善悪が最後まで定まらないところ、絶望的な状況からはい上がろうとする主人公の強い意志など、上橋菜穂子の作品に共通する良さがそこかしこにあって、こんな作品が同人誌で発表されていたのか、と感動しました。
 「汚い戦争」「フカシ」「浄化竹」などの「天顕祭」の世界観をつくりだすことばのセンスが素晴らしい。このことばが隠喩するものは明白だけど、作中では一切触れない潔さも好きですね。