平成20年夏休み文楽特別講演 第1部「西遊記〜悟空の冒険」第2部「お夏清十郎五十年忌歌念仏(おなつせいじゅうろうごじゅうねんきうたねんぶつ)」「鑓の権三重帷子(やりのごんざかさねかたびら)」

 今年も行ってきました、夏休み文楽特別講演!
 いやあ、「西遊記」面白かったなあ。伝統芸能であるということで、文楽を堅苦しく考えている人には、ぜひ見ていただきたい破天荒さ。
閻魔大王の持ってる閻魔帳は「れんらくちょう」だわ、火焔山では、悟空はサングラスで八戒は麦わら帽子にブタ柄の日傘さしてるわ、村人は沙悟浄に557のアイスを売りつけるわで、会場バカ受け(もしかして関西ローカル企業かもしれないので補足しますが、55「1」の蓬莱という中華のファーストフードのもじりです。「ゴーゴーイチノホーライ♪」というCMソングを知らない関西人はいないでしょう)。あげく、悟空と牛魔王の変化合戦では、くいだおれ人形に化けた悟空を、グリコの大看板になった牛魔王がバンバン叩きのめすという、想像の斜め上を行くサービス精神でした。他にも、悟空が空を飛んだり、芭蕉扇があおぐたびに手品のように大きくなったりと、チビッコたちが喜びそうな仕掛け満載のユカイな舞台。私はこの舞台は初見でしたが、「悟空の冒険」は上映ごとに、その時々の時事ネタを取り込んでいて、とても面白いのだそうです。
 「お夏清十郎」の「笠物狂の段」と、「鑓の権三」の「浜の宮馬場の段」はお昼寝ターイム。
 「留守宅の段」から起きて見ました。私は、痴情のもつれの際に男性側の肩を持つことはまずないんですが、これはおさゐがひどい。なんつーか、日頃憎からず思っていた夫の部下を、出世のネタをちらつかせて強引に自分の娘の許嫁にしたものの、権三に別に婚約者がいることを知って嫉妬に狂ってヘタこいたあげく、不義密通の濡れ衣を着せられるって…お前の思慮が足らんのがいかんのじゃないか! 娘の許嫁にあそこまで執着するのって、ぜったいおかしいよ。もし何事もなく、娘のお菊ちゃんと権三が結婚したとしても、あとで絶対に過ちを犯すね、この奥さんは。顔が良かったばっかりに、年増に言い寄られて、にっちもさっちもいかなくなってしまう権三は、そりゃ優柔不断といわれればそうかもしれんが、気の毒というより他はない。貞淑な人妻が、一時の熱にかられて過ちを犯すという、まごうことなき昼メロの世界でした。
 今回は、会場の笑いがちょっと気になったなあ。おさゐと権三がどんどんと悲劇に追い込まれていくのに、なぜか笑いが起こるんですよね。人の愚かさを嘲笑うみたいな感じで、ちょっと厭な笑いでした。端から見れば昼メロの登場人物は、滑稽かもしれませんが、当人たちの必死な気持ちは、人形と三味線と謡によって切々と表現されているのに、笑うところではないと思うのですが。