蛙とび行事

 吉野山金峰山寺蔵王堂で毎年7月7日(七夕)の日に行われる蛙とび行事に行ってきました。
 11:00頃吉野口着
 
 下界よりはまだ過ごしやすい山の空気を感じながら、昭和3年完成というおそろしいロープウェイに乗って、山上駅へ。
 黒門付近で取材の兄ちゃんにとっつかまりつつ、中千本に向かってたらたら登ります。気になるのが道の両脇にあるお店の七夕飾り。どのお店もデザインコンセプトのしっかりした趣向を凝らしたものばかりで、すごく見応えがあります。「特別賞」や「彦星賞」等の札が下がっているところを見ると、コンテストがあるらしいです。蛙とび行事を意識して、カエルをモチーフにしたデザインが多く、町全体で、七夕と蛙とび行事を楽しもうという意気込みが伝わってきて、ワクワクしてきました。
 11:00頃竹林院下着
 途中、蔵王堂の行事会場を下見し、お土産物屋を冷やかし、七夕飾りを堪能して行列の出発地点である竹林院下に到着しました。ここで昼食。のんびり名物吉野葛うどんを食べていると、遠くから太鼓の音が…。
 13:00頃御輿出発
  
あわてて外に出ると、ちょうど御神輿が降りてくるところでした。この蛙とび行事、名前だけだと何をする祭りなのか分かりませんが、カエルが御神輿に乗って吉野の参道を練り歩き、蔵王堂で山伏の祈祷を受け人間に戻る、というもの。で、そのカエル、人間が扮しているのですが、本当に「着ぐるみ」としかいいようがないものを着ています(後ろには袈裟ガケにチャックもついている)。なんというか…なんともいえず…すごく、ヘンで…おもしろすぎる。もともと、こういう「練り歩き」のお祭りが好きで、御神輿担ぎの兄ちゃんたちのかけ声やら、お囃子やら、それを見守る人々の熱気やらに当たると、じっとしていられなくなってしまうのですが、今回はこのカエルに大興奮! しかもカエル、とても愛想がよくて、御神輿から手を振ってくれるのみならず、途中休憩では御輿から降りて写真までいっしょに写ってくれます。大きく開いた口のところに薄い布がかかっていて、中身はメガネのお兄さんでした。御神輿は、床がなくて、枠組みに足をかけて立っていないといけないので、たぶんものすごく暑くて大変だとは思うのですが…。
御輿には、はじめカエルと太鼓の男性だけだったのですが、途中から近所の子どもが「のれのれ」と誘われて乗り込んでいました。休憩ごとにその数が増えていって、最終的には8人乗ったかな。あ、でもカエルは小さな子には恐怖の的でしたね。小学生くらいの子どもは「中若」、もっと小さな子は「小若」の半被を着ていて、どの子も激写したい可愛らしさ! 担ぎ手のお兄さんたちは、「大若」…ではなくて「若中」でした。行列について歩くのは、観光客より地元の人が多い感じで、とてもアットホームでいい雰囲気です。
14:00頃蔵王堂前
 
蔵王堂の前まで来ると、観光客のカメラの砲弾が待ちかまえていました。御輿はここから、さらに下ってロープウェイの入り口でお坊さんと蓮の花と合流するらしいのですが、観光客の数を見ていると、法要の場所取りをした方がいいだろう、ということで、名残惜しいけれど、御神輿と別れ、蔵王堂で待機することに。この日は、空は薄曇りでしたが、湿度は高く、ものすごく蒸暑かったです。ただ歩くだけでもしんどいので、担ぎ手さんたちの大変さが思いやられました。御輿そのものが重いだけでなく、山道だから高低差があるんですよ。しかも、疲労がピークに達する最後の場面で、きっつい石段を駆け上がるっていうのだから、担ぎ手の飛び入りが健脚の男性に限るとされていたもの納得です。
15:30頃蔵王
 
せっかく席取りしていましたが、石段側だったので、御輿のために一旦退却。最後の力を振り絞って、御輿が石段を駆け上がってきます。最後の段でふらついて悲鳴が上がっていましたが、驚異の根性で立て直し、無事に到着。カエルは3名の担ぎ手に背負われて、舞台に上がります。ここで、カエルは、一旦蔵王堂に引っ込み、しばらくして再登場。あれ、さっきのカエルと口の色が違う…どうやら、入れ替わったみたいです。新・カエルが台座に神妙に鎮座すると、法要が始まります。これが長い〜。や、メインなのは分かってますが、ここで最後の体力を消耗しました。法要が終わると、カエルは台座から降りてずりずりと戒壇まで這っていき(蛙「とび」行事ですが、ぴょんぴょん飛んだりはしません)、それを何度かくり返して、カエルのかぶり物を取って人間に戻してもらい(でも首から下はカエルの着ぐるみのまま…)、無事終了。
17:10吉野山上駅発
ロープウェイに乗って吉野口へ。暑さでくたくたでしたが、お祭りの雰囲気を十分堪能できて満足です。行事の名前に騙されて派手なパフォーマンスを期待するとがっかりするかもしれませんが、こんなことを昔っからやっていたのかと思うと楽しくなっちゃうような、ユニークなお祭りです。そして、最後まで、どうしてカエルなのか、なぜカエルになったのか、いつ頃からこの祭りがあるのか、などは分からずじまい…。パンフレットとか全然なくて、商売っ気のない、地元の人の祭りという感じでした。まあ、そこがいいんですけどね!