遠まわりする雛

遠まわりする雛
「やるべきことなら手短に」「大罪を犯す」「正体見たり」「心あたりのある者は」「あきましておめでとう」「手作りチョコレート事件」「遠まわりする雛
 甘酸っぱい…甘酸っぺえよ! ホータロー君それは…だ。しかし言ってしまうのは、なんだか無粋なような気もします。言葉にして陳腐になってしまうのが怖いくらいに、初々しい登場人物の心情でした。電車の中で、にやにやしそうになる口元を抑えるのに必死になってしまった。今までのシリーズの幕間のような出来事が語られるのですが、登場人物の役割とかを結構忘れていて、前作を読み返したくなります。「クドリャフカ」はまだ文庫落ちしないのかなー。
 「心あたりのある者は」は、短編賞の候補作になったそうですが、ホータローが最初から本気を出して理屈をつけようとしているのが、話の流れ的に不自然に思えて納得がいかず。納得がいかないと言えば、「手作りチョコレート事件」で、ホータローが「千反田と伊原の分も代理して」と言っていましたが、そこに中山さんも入れてあげて欲しかった。ホータロー自身が言っていたとおり、この件の最大の被害者は千反田さんに誤解を受け続ける彼女なのだから。収録作で一番好きなのは、やはり「遠まわりする雛」。読者はホータローの視点で読んでいるので、桜の下を歩む雛を見られなかったのが悔しくてなりません。ああ、もう、もどかしいったら!

「直角を含まない平行四辺形になってますね」