大阪上町春めぐり 文楽と中国琵琶「義経千本桜 道行初音旅(みちゆきはつねのたび)」

 大阪天王寺時の境内で行われた野外講演に行ってきました。ちょうど古本市のある日だったので、最終日店じまいの始まる3時半頃に天王寺に行って、古本を漁り、近くの中国茶のお店で本を読んで開演までの時間をつぶしました。会場は6時半だったのですが、少し早めに行ってみたらすでに長蛇の列ができていました。
 二部構成で、一部は中国琵琶の奏者エンキさんの演奏、間にエンキさんと、浄瑠璃の豊竹呂勢大夫(とよたけろせたゆう)さん、三味線の鶴澤清介(つるさわせいすけ)さん、人形役割の桐竹勘十郎(きりたけかんじゅうろう)さんとのトークがありました。
徐々に暮れていく寺院の境内で、涼しさの残る春の風に吹かれながら、中国琵琶の音色に耳を傾けるのは、なかなかない体験です。中国琵琶の音色は、とても華やかで、弾いていたのが若くて美しい女性なのも相まってぱあっと視界が開けるような爽快感がありました。
文楽のお三方とのトークも、皆さんがエンターテイナー精神旺盛でとてもおもしろいお話でした。話の途中で、「ほんなら中国琵琶と文楽とちょっと合わせてみましょうか」ということになり、中国琵琶と三味線の「さくらさくら」の演奏に合わせて、豊竹さんが唄い、静御前が舞うという特別の舞台が実現しました。事前の打ち合わせがあったのかなかったのか、息がぴったりで、嫋々と流れる三味線と、華やかに響き渡る中国琵琶の音に合わせて、静御前が桜の花びらのようにひらひらと躍るのはちょっとないくらい可憐で、客席は大興奮でした。
義経千本桜」は、あらすじもよく分らず見ていたのですが、最初出てきたキツネが、静御前に懐いているのが可愛かったです。途中から義経の家来忠信に変化して、静御前と舞を舞うのですが、その最後に、今度は忠信の姿で静御前にすりすりするのは、ぎょっとしましたが…(笑)。野外なので、字幕はなく、何を唄っているのか、今どんな場面なのかもよく分らなかったのですが、不思議と眠くもならず、集中できました。
野外講演というと、平安神宮薪能くらいにしか行ったことがないので、ちゃんと背もたれのついた椅子が用意されているのがとてもいいサービスのように思えます(笑)。お客さんの雰囲気も和やかで、気候も良く、なかなか贅沢な時間を過ごせました。