魍魎の匣

 榎木津パート、関口パート、木場パートに分かれて話が進む前半部分は、さすがに少し分りにくい。けれども、それらがぐいぐいと集約していく後半からは、怒濤のように話が展開していき、引き込まれました。原作の厚さに比例して、「姑獲鳥の夏」がストレートに原作を脚本にしていたのに比べると、時系列をいじったり、登場人物を減らしたりとかなり改編を加えてあります。しかし、ちゃんと「魍魎の匣」になっているところは、脚本のうまさに感動しました。原作から軸となるストーリーを絞り、それに直接関係ないエピソードは思い切ってばっさり切ってあるのは潔いです。原作で印象的だった「みっしり」も、映画の脚本には関係ないから、なかったもんなあ。
御筺様vs京極堂、久保俊公vs榎木津のシーンは、迫力あって、非常に気分が高揚しました。快刀乱麻を断つヒーローものはやっぱりすっとしますね。あと、ちょっとしたエピソードに使われる小道具の見せ方が上手くて、楠本頼子の靴なんかはぐっときた。原作のエキセントリックさはないけれど、榎木津さん、格好いいなあ。見ていて気持ちいいです。逆に気持ち悪いのが木場修…泣。私はどうもあの役者さんのあの演技が受け付けなくて、原作の無骨な木場修が好きなだけに、残念なことこの上ない。あと、関口! 途中まで???と思いながら見てましたが、「姑獲鳥の夏」と役者さん違うんですね。だって、前回は関くんがサルだということに感心したのに、今回サルじゃないし、しかもすごい明るいし役に立ってるし。こんなの関くんじゃない(笑)。しかし、最後の京極堂との絡みのシーンはどうしても必要だったのか。それまでシリアスに展開してたのに、なぜあそこでギャグを…? 嫌いじゃありませんけどね、ああいうちょっとおちょくったような演出は。実生寺監督が、どうしても怪鳥姑獲鳥を入れたかったようなものかな。
前半はちょっと首をかしげながら見てましたが、見終わった後は満足しました。しかし、上海は上海だったなあ。