千年の時をこえて

千年の時をこえて (エンタティーン倶楽部)
「しきしまの やまとのくには」「われのみや よふねはこぐと」「ひとはみな いまはながしと」「はたものの ふみきもちゆきて」「あめのうみに くものなみたち」「みなとなる あしのうらはは」
 小学校5年生の静枝は、恋愛関係の話題が嫌いなタイプの女の子。クラスメートの立花くんに告白されて、驚いて逃げ出した先の神社で平安時代の幽霊マコマに出会います。神社から動けないマコマですが、生前習い覚えた「和歌」を手がかりに静枝には見えない人の心の綾を解きあかしていきます。あとがき読むまで作者が安楽探偵物として書いたとは思いつきませんでした。読後感は、なんて可憐なロマンス…と。甘々のラブストーリーなんだけど、「恋」だけではない大切なテーマがあるところは「レディー・ヴィクトリアン」を読んだ感じに似ています。
第5話の「天の海に 雲の波立ち 月の船 星の林にこぎかくる見ゆ」のストーリーはベタだけど良かった。歌もこれが一番分りやすいですしね。
ラストは、SF的に落とすのかと思ったら、正統派の幽霊物でした。
 イラストは、「文学少女」シリーズの竹岡美穂。とっても可愛いです。エンタティーン倶楽部は森奈津子とか芦辺拓とか、変化球を投げてくる侮れないシリーズですね。