トプカプ宮殿の秘宝 京都市文化博物館

 中東と言えばいいのか、アラビアンと言えばいいのか、イスラーム圏と言えばいいのか、あの辺の美術は、煌びやかで艶っぽくて、一面ストイックな感じもあり、大変好きです。今回も豪華だった。
 キリスト教でもそうですが、贅を尽くし、技芸の極みをふるって書かれる聖典の美しさに、言葉もありませんでした。アラビア文字の流れるような筆致が模様のように画面を埋め尽くしています。繊細な曲線を描く典礼用の武具も良かったけれど、出品された道具で一番気に入ったのは、ラヴタと呼ばれる弦楽器でした。木目の美しい肌地に真珠色の貝で象眼が施された見るも雅なフォルムの前に呆然…。う〜ん、なんだろう、濃厚なエロティシズムと、理知的な計算が同居しているというのかな、そういう雰囲気が展示品全体にあります。あとあと、王女さまのブーツが、深紅の生地に金糸で刺繍が施されてて、とってもおしゃれでした。ヒールのついたくるぶしまでの編み上げブーツで、愛らしさと美しさのなかに貴婦人の威厳が備わっているというか。サイズも、やや華奢な感じで、靴フェチじゃありませんが、これだけで大変萌えました。
 今回もキャプションがたいへんわかりやすく、しかもオスマン帝国のおいしい豆知識コラムがとてもおもしろかったです。王子は、スルタンになれなかったときのために、みな何かしら手に職を持っていて、家具作りが得意だったり、庭仕事ができたりしたとか。あと、ハーレムの女性たちは、男性と言葉を交わせなかったので、手に持っている扇で想いを伝えたとか。扇を仰いだり、耳に当てたりすることで「あなたがきらい」「すこしまって」とか意味がある対応表がありました(うろおぼえなので、例示はいい加減です)。残念ながら、図録には載っていないようですが、もったいない〜。なんていうか、『流血女神伝 砂の覇王』の世界でした。