夜明けの縁をさ迷う人々

夜明けの縁をさ迷う人々

夜明けの縁をさ迷う人々

「曲芸と野球」「教授宅の留守番」「イービーのかなわぬ望み」「お探しの物件」「涙売り」「パラソルチョコレート」「ラ・ヴェール嬢」「銀山の狩猟小屋」「再試合」
 帯が「『博士の愛した数式』『ミーナの行進』の小川洋子が世界の片隅に灯りをともす、珠玉のナイン・ストーリーズ」でうそつき。九つの狂気が織りなすスプラッター・ホラー短編集じゃないか。「博士〜」が出たとき、従来の小川洋子を知っていた読者から驚きの声が上がったものだけど、「博士」の大ヒットによって、世間一般の小川洋子は「ピュアな泣ける感動作を書く人」というイメージができあがってしまった。それ以降の作品も「いい話」系が続いたので、ここらで一発違う傾向の物が書きたいな、とか考えたのかな。
「ピュア(純粋)」とは、独りよがりで、愚かで、残酷で、狂気と紙一重なのだ、ということをこれまでになく通俗的に書いていて、生臭い匂いのする閉鎖的で気持ちの悪い読後感でした。