青年のための読書クラブ

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「烏丸紅子恋愛事件」「聖女マリアナ消失事件」「奇妙な旅人」「一番星」「ハピトゥス&プラティーク」
 単性の学園を舞台にした創作は、すでにして実像を離れたファンタジーなのだけど、この作品にはさらに斜め上をいく仕掛けが施されている。華族の令嬢やら、「王子」と称される疑似恋愛の対象である人気者、華やかな演劇部と知的な生徒会などなど、女子校のガジェットが駆使される中に、こんな奇妙な記述がある。「…二体の人体模型があり、からまりあって卑猥なポーズを取らされ…」これは、男子校を示す道具立てではないのだろうか? なにより、登場人物の少女たちは、一昔前の書生のように喋るのだ。女子校には、ひとりくらいは一人称が「ボク」であるキャラクターが登場するものだが、ほぼ全員ボクキャラというのは、異常。つまり、ここは読者にとっては男子校にも思える場所なんである。創始者にしてから、性別のトリックを施す念の入れようで、著者は一粒で二度おいしい、女子校でもあり、男子校でもあるという奇妙な空間を作り上げた。
 他にもちまちまとした仕掛けが随所に施されていて、きっと著者は宝物を(それは少年少女の宝物、つまりはガラクタである)隠すように、くすくすと笑いながらこの悪戯を仕掛けていったに違いない。その稚気がひそやかな愉しみとなって、この作品の魅力を引き立てていると思う。
 期せずして表紙がよく似ている2冊を続けて読んでしまった。