バチカン・エクソシスト

バチカン・エクソシスト

バチカン・エクソシスト

 現在、イタリアではエクソシスト(悪魔祓い)が増加しているそうな。戦争ジャーナリストだった著者が、エクソシズムに興味を持ち、ヴァチカン、エクソシスト、悪霊憑きの人々、精神科医にインタビューしまくって現代のエクソシズムの一端を浮き彫りにする。悪魔憑きと判断することで、精神的な疾患を見過ごし、悪化させるのではないかという当然の危惧も呈されているが、著者は、そういった現代の一般的な見方をとりあえず横によけておく。悪魔祓いを信じる人々を信じ、寄り添って書くことで、複雑な問題を複雑なまま描き出すのだ。
 現代科学と教義の折り合いをつけようとしている教会が、「悪魔」をどうとらえればいいのか苦悩している様子が伝わってきておもしろかった。「悪魔」の実在を否定することは、聖書を否定することだからね。かといって、悪魔がそうほいほいと人に憑くことを認めたら、一気にうさんくさく見られて、知識人階級の信仰心が離れて行きかねない。エクソシズムが、宗教と科学という非常に現代的なテーマにつながっていく過程はスリリングだった。