104月曜日に来たふしぎな子

月曜日に来たふしぎな子 (岩波少年文庫 (104))

月曜日に来たふしぎな子 (岩波少年文庫 (104))

 フェアリーテイルをもとに現代的な趣向を凝らした味わい深い小品集。
 一人暮らしのおばあさんの自由気ままな孤独を優しく描いた「おばあさんと四つの音」、錫の兵隊よりもっと切ない遠距離恋愛の「水兵ランビローとブリタニア」、不器用な陶芸家の王女への愛がほろ苦い「フーの花瓶」など、大人の目で読むと人生の苦さに気づかされる作品が多いです。特に「水兵〜」は、解説には「小さな世界が、読むうちに大きな宇宙に広がる感じ」がするとありましたが、私には、狭い世界しか知らない無力な人形の、かなえられることのない願いが虚しく哀れに思えました。著者は、そういったうまくいかない部分にも、愛情とちょっとした諦観を込めて包み込むような眼差しを注いでいます。