教室の祭り

教室の祭り (わくわく読み物コレクション)

教室の祭り (わくわく読み物コレクション)

 5年生になった澄子は、おとなしくて絵の上手な友達の直子と同じクラスになったのを喜んでいた。しかし、通い始めた塾で仲良くなったカコたちとつきあううちに、直子とはあまり話さなくなってしまう。教室で一人になった直子はいつの間にか学校に来なくなってしまった。カコたちは直子を学校へ引っ張り出そうといろいろな「作戦」をたてるが、それはまるでゲームのようなお祭り騒ぎ。これは本当に直子のためなのだろうか…違和感を感じつつも澄子はカコたちから離れることができない。
 強引だけど明るくて教室の中心的な存在であるカコと、「自分のやりたいこと」とその才能を持っている直子とのあいだで、どちらを友人とすべきか思い悩む澄子の気持ちがよく書かれています。せまい子どもの世界で、二つを両立させることはとても難しい。小学生の女の子が一度は悩む教室での人間関係をリアルに描いていてなかなかよかったです。最近だと長谷川集平「デビルズドリーム」も、そういう現代を生きる子どもたちへの支えになりたいという作者の思いが伝わってくる作品でした。