桜花(さくら)を見た

桜花を見た

桜花を見た

 『新耳袋』を参考書目にあげた『ひとつ灯せ』に続いて他人の作品を下敷きにした話を読んだので、宇江佐さんは本歌取りの多い作家さんだな、と思ってしまった。創作物が個人所有のものという意識の薄かった時代には、パクリという発想もなかったようなので、そういう時代を題材にした小説を発表する作者らしいと思う。とても上手に自分のものにしているので、ちょっと痛快です。表題作もテレビドラマを意識して書かれていて、オチは分かっていましたが、きたーっ!と嬉しかったです。
 お栄ちゃんが主役の「酔いもせず」。杉浦日向子さんのお栄が第三者の目から見たものだとしたら、その内面を描いたのが宇江佐さんのお栄と言えます。内面にどれだけ鬱屈した思いを抱えていようと、それを絶対に表には見せない鼻っ柱の強い女性が大好きなので、ツボでした。岩波文庫の『葛飾北斎伝』も読んでみたくなります。