鼻ほじり論序説

鼻ほじり論序説

鼻ほじり論序説

 鼻ほじりという人類の一大テーマを、歴史、文化、作法などから多角的に論じている。
 作品社の「大全」シリーズの縮小版といった趣があるが、「序説」と銘打たれていることもあって、いくつか論証に不十分な点があり不満が残った。ひとつには医学的見地からの言及がなされていない点、また、女性の鼻ほじりについて「決して認めない」という学術的ではない理由からほとんど触れられていない点、さらに西洋文化圏以外の鼻ほじり文化についての検証にやや偏りが見られる点である。イスラムにも鼻ほじりに一家言持つ人々はいるのであり、中国大陸には四千年の歴史の重みをもつ大部の文献資料が残されている。もちろん我が国にも鼻道という洗練の極みに達した鼻ほじり文化があるのである。
 しかしながら、多くの人々の関心事でありながら今まで論じられることの少なかった鼻ほじりを正面から取り上げたという点は評価されてしかるべきであり、この書を契機に鼻ほじりにかんするより優れた研究書が現れるのを待ちたい。