七姫幻想

七姫幻想

七姫幻想

 似たようなタイトルのライトノベルがあったような…閑話休題(おいといて)。
 古墳から江戸時代という長い歴史の中に点在する七人の姫君を主人公にした七つの短編集。それぞれの時代の雰囲気がよく出ているのが驚きだった。この人はライトノベルでも江戸の時代小説でも十分書けそうな気がする。
 機織りが重要なモチーフとして描かれており、七姫というのは織女の七つの異称であるらしい。その七つの異称から作られた物語を横糸に、最初の蜘蛛(ささがに)姫から発する機織りと薬の知識をもつ一族の歴史を縦糸に織り上げられたたおやかな絹織物のような幻想絵巻だった。
 「れんげ野原のまんなかで」の時にとってつけられたような感のあった恋愛感情が、この物語では真っ向から取り上げられている。こういう匂い立つような官能的な恋模様を描くのがこの作者の本領なのかもしれない。