シャルビューク夫人の肖像

シャルビューク夫人の肖像

シャルビューク夫人の肖像

 19世紀末、ニューヨーク。社交界で人気のある肖像画家が、奇妙な依頼を受ける。屏風に隠れた女を姿を見ることなく描いて欲しいというのだ。画家は、毎日その屋敷に通い、シャルビューク夫人を名乗る女の数奇な生い立ちを聞かされる。一方街では眼から血の涙を流して死に至る奇病が流行していた。
 殊能将之氏の日記で褒められていたので読んでみようと思いました。
 シャルビューク夫人の昔語りといい、街を汚染する奇病といい、現実にはあり得ないはずなのですが、読んでいる間は実際に起こりそうに思えてなりませんでした。なので、幻想小説というより「シャルビューク」という謎を巡るミステリーとして読みました。主人公が絵筆をふるうときに駆使される絵画的技巧の数々がもっとも幻想的であったと思います。
 表紙に使われている「マダムXの肖像」が、作中で描かれるべき肖像画とリンクして、見るたびに幻惑されました。