091アラビアン・ナイト下

アラビアン・ナイト〈下〉 (岩波少年文庫)

アラビアン・ナイト〈下〉 (岩波少年文庫)

 上下巻で、解説は下巻のみ、そしてシェヘラザード姫の物語は解説で少し触れられるだけ、というのは子どもの本としては少々不親切ではないだろうか。上巻に「はじめに」をつけて紹介すべきだと思うのですが。「アラビアン・ナイト」に関しては、収録話数も巻数も多く、天野喜孝氏の挿絵も麗しく、訳文も生き生きと親しみやすい青い鳥文庫の方がよいと思います。自分が中学生の時に夢中で読んだというひいき目かもしれませんが。
 閑話休題
 「ヘビの妖精と二ひきの黒犬」「シナの王女」「魔法の馬」「ものいう鳥」「アリ・ババと四十人の盗賊」「漁師と魔物」
 アラビアンナイトに出てくるのは、自己主張が強く、実際魔法も使えたりするパワフルな女性ばかりです。特に「ヘビの〜」は女性商人が自分の船で冒険の旅に出るお話で、ヨーロッパやアジアのおなじみの昔話とはずいぶん違います。イスラム圏では女性の権利は保障されていたというのは、本当らしいですね。男性も、恋に落ちると見境なくなる情熱的な人が多くて、これも新鮮な印象を受けます。
 「漁師と魔物」は大好きなお話で、最初の漁師と魔神のやりとりのユーモラスさ、色とりどりの魚の泳ぐ湖の不思議さ、蠱惑的な悪女の罪が暴かれる背徳的なところなど、アラビアンナイトの魅力が凝縮されています。