088ほんとうの空色

ほんとうの空色 (岩波少年文庫)

ほんとうの空色 (岩波少年文庫)

 カルマール・フェルコーは、貧しいが絵の上手な少年。お金持ちの同級生チェル・カリに借りたあい色の絵の具をなくしてしまい困っていると、用務員のおじさんが青いやぐるまぎくの咲く野原を教えてくれた。そのやぐるまぎくで作ったあい色の絵の具で描かれた空には月が出、星が瞬き…。
 フェルコーは、チェル・カリとあこがれの女の子ジュジと、3人で秘密を共有することになります。このチェル・カリが嫌なやつなんですが、別にあとでひどい目にあることなくフェード・アウトするだけで、淡泊な扱いだと思いました。

 なんと言っても、「ほんとうの空色」で塗られた空の描写が幻想的で美しい。画用紙に、木箱のふたの裏に、帽子の中に、そして半ズボンに広がる小さな宇宙。
 フェルコーが最初に「ほんとうの空色」を使ったときに、絵の具をこぼした半ズボンが、最後に重要なアイテムとして使われる構成の妙にもうならされました。
 地味な作品ですが、子どものころに読めば「ほんとうの空色」を心に焼き付けることができるでしょう。