「蟲師」DVD第五集特別先行試写会 蟲の宴in大阪

 少し早く中之島に着いたので、ロビーで時間をつぶそうかと20分ほど前に会場に着いたら、すでに長蛇の列。思わず、「あのー、これなんの行列ですか?」って聞いてしまいました。

 会場限定販売のストラップと一筆箋は、あっという間に売り切れ。欲しかったなー。
 しかし、絵コンテ集とか美術ボード複製とか、特別版DVDの予約とか、散財しまくりました。ストラップと一筆箋が残ってたら、手持ちのお金じゃ足りなかったです(と、自分を慰める)。


 いよいよ本編ですが…大画面に映し出される風景に胸がいっぱいに。

 テレビ放送では見えにくかったところもよく見えて、細かいところまで手を抜いていないのが分かります。応募してよかった…当たってよかった!

 見逃した「眼福眼禍」、すばらしかった!あまねに腕を取られてあわてふためくギンコの様子がおかしくて。ギンコが曙を見るシーンがあるのですが、これがいずれあまねにとっては永遠に失われていくものなのだと思うと胸が締め付けられるようで、苦しいほど美しかったです。

 テレビ放送と違っていたのは、「篝野行」のオープニング。野萩の回想シーンが追加されていました。

 これは第1話から20話までも見たくなります。マラソン試写会、やってくれないでしょうか。


 6話見終わった後は、会場ごとに違う趣向を考えてあるという長濱監督、中野裕斗氏、小林愛さんのトークショー

 大阪会場ではなんと!長濱監督がクマド役を演じる「棘のみち」ラストシーンの生アフレコでした。お三方は原作のコピーを持ってそれを読む、という形だったのですが、未だ映像化されていないそのシーンが瞼に浮かぶようでした。そりゃもう会場中が歓喜にうちふるえていましたよ。しかもスクリーンにはタイトルロールまで映し出されていました。長濱監督は「全然まだできていない、ずっと先のお話なんですが」とお話しされていて、それでは待ったら今後も新しいアニメ「蟲師」を見ることができるのかといやがおうにも期待は高まります。


 それから、来場者による質問コーナーに。

Q.ナレーションがぬい役の土井さんなのは、監督には何か考えがあったのでしょうか。

A.最初のキャスティング段階から決まっていました。ギンコは全く忘れていても、ぬいの哲学は欠片のようにギンコの中に残っている。ギンコはぬいの精神を受け継いで蟲師をやっているんです。ですから、物語の時間枠ではすでに消えてしまっているけれども、ぬいの蟲師としてのあり方を残したかった。原作を読んでも、語りとしてずっと出てくるのは、ぬい以外は考えられないはずです。


Q.中野さんはオファーがくる前から「蟲師」を知っていましたか。

A.知ってました。友達から勧められて読んでいました。(会場どよめく)


Q.小林愛さんは、淡幽が出てこない回で好きな話はなんですか。

A.「綿胞子」です。親子の愛情を描きながらも、ちょっとSFチックな感じがして、他の蟲師の話とも少し違うイメージがあるので。


Q.印象に残った話は。また苦労したところは(DVD視聴者に、ここに注目してみて欲しいところなど)。

A.中野:「やまねむる」です。ムジカとギンコの男の任侠っぽい関係性がいい。「おやっさんがそんなことするこたねぇだろ!」みたいな。男気のあるギンコが見られます。苦労したところは、全部。うまく言えない台詞が多くて、しかも抑揚があまりつけられないので、どうやって聞かせるか、音響監督と一緒に悩みました。

  小林:「私にだってできる蟲封じはあるのだぞ」の「〜のだぞ」がどうしても言えなくて、何度もNGを出しました。

  長濱:「緑の座」は最初ということもあって、一度つないだのをもう一度全部やり直しました。どの話にも見て欲しいところはある。全編通してデリケートな作品なので、嘘くさくならないように気をつけました。髪の毛とか指先の動きとか、草のゆれるシーンとか。実はまだDVDリテイク中なんですが、「蟲の宴」と往復しつつ、水の波紋や草の揺れを追加して、など細かい細かいところを直していってます。


Q.アフレコが長いと聞きましたが、何かアフレコ秘話などはありますか。

A.中野:「海境より」ではへべれけになっていて、全然しゃべれませんでした。あと、毎回のゲスト声優さんが、(「蟲師」という独特の世界で声をあてるに当たって)同じことを悩んで帰ってました。やっぱりおれが悩むのは間違いじゃないんだって。

  小林:アニメーションがない状態でアフレコするのは初めてでした。アフレコ中も何か一言しゃべるたびに、ばたんと扉が開いて、音響監督が入ってきて、このときの淡幽の気持ちはこうで、おたまさんはこんな感じでしゃべってて、と立て石に水の説明をしていきました。最後には私の背後にぴったりと張りついて「言え〜ちゃんと言え〜」というオーラを放ってました。(長濱監督のツッコミ:ふつうは音響監督は部屋には入らないものなんだけどねー)
  「のだぞ」は20回はやり直しました。

  長濱:長かった。原作が本当に好きなので、アフレコ聞いていても何度も泣きそうになりました。この台詞いいなあ、って思って。「眇の魚」でぬいがヨキを突き放すシーンなんて特に。OKなんだけど、もう一度しゃべって欲しいからもう一回やってもらえないかなあ、なんて、ただのファンみたいなことを考えてました。



 会場からの質問を終え、お三方が一言メッセージを言って、「蟲の宴」は終了しました。
 席を立って、帰る人々のざわめきの中、ひときわ大きなどよめきが。
 最後にスクリーンに26話終了後の「また いつか…」の絵が映し出されました。「棘のみち」のタイトルロールといい、本当に原作とファンを大切に考えた、まさに「手抜きのない」演出のでした。
 「蟲師」のスタッフの熱意を肌で実感しました。

 中野裕太さんがムジカとギンコの関係を任侠ものにたとえていたのが一番おもしろかったです。立ち姿も足を肩幅以上に広げて立つ「アニキ立ち(というのかどうか知りませんが)」でした。肩の力の抜けたもの柔らかな印象の、意外と小柄な男性でした。

 「蟲師」という愛する作品が、素晴らしいスタッフにアニメ化された奇跡を何度でも感謝したいと思います。