083天国を出ていく

天国を出ていく―本の小べや〈2〉 (岩波少年文庫)

天国を出ていく―本の小べや〈2〉 (岩波少年文庫)

 「天国を出ていく」「小さいお嬢様のバラ」「むかしむかし」「コマネラのロバ」「ティム一家」「十円ぶん」「≪ねんねこはおどる≫」「ボタンインコ」「サン・フェアリー・アン」「ガラスのクジャク」「しんせつな地主さん」「「がみがみシアール」と少年」「マニュキス」

 こちらはより大人向けの作品がそろっているように思う。「ティム一家」「≪ねんねこはおどる≫」「パキュニス」などは大人が読む方が作品の意味を深く汲み取れると思う。
 とくに「≪ねんねこはおどる≫」は、幼い少女と、幼い少女に返った老女とが肩を寄せ合って生きている健気さを十分に描いた上で、丹念に張っておいた伏線をあかす手並みは見事だった。
 無邪気な少女が守銭奴だった男の心を溶かす、という児童文学では定番の設定に、おとぎ話のような結末をつけ、感動的な「しんせつな地主さん」もよかった。
 少年の嘘をかなえる「コマネラのロバ」、拾いものをした少年の一日の楽しみを描く「十円ぶん」、人形がふたりの少女たちを出会わせる「サン・フェアリー・アン」も好き。