082ムギと王さま

ムギと王さま―本の小べや〈1〉 (岩波少年文庫)

ムギと王さま―本の小べや〈1〉 (岩波少年文庫)

 「ムギと王さま」「付きがほしいと王女さまが泣いた」「ヤング・ケート」「名のない花」「金魚」「レモン色の子犬」「貧しい島の奇跡」「モモの木をたすけた女の子」「西ノ森」「手まわしオルガン」「巨人と小人」「小さな仕立屋さん」「おくさまの部屋」「七ばんめの王女」

 王子さまや王女さま、貧しい職人や召使いが主人公の昔話風短編集。旧岩波少年文庫「ムギと王さま」に「THE LITTLE BOOKROOM(本の小べや)」から11編収録してあったものを、新版で二分冊とし全27編を収めたもの。どの作品も、レベルが高く、訳者はいつか完全訳を出版したいと願っていたのだろうと思う。

 結末や物語形式など、バラエティに富んでいて、全く飽きない。どの話も含蓄があり、おだやかで、包み込むような深い優しさを感じる。
 自由に生きる若い女性を描いた「ヤング・ケート」、貧しい島と女王との言葉にならない交流を描いた「貧しい島の奇跡」、腕のいい仕立屋が作るとりどりの衣装が鮮やかな「小さな仕立屋さん」が特に心に残った。