英国王のスピーチ

上映時間111分
偉大な王の歴史ドラマというより、困難に立ち向かう等身大の個人を描いた人間ドラマでした。
王が演説しなければならないシーンが、異常な緊張感を強いられる場として演出されているので、すぐに王に感情移入してしまって、演説のシーンのたびにドキドキしました。
平時でさえ指導者がうまく喋れないなんて困るのに、折りしもナチスドイツとの開戦に踏み切る時、自分の言葉で国民をまとめることができなければ、祖国が負けてしまうかもしれない…国民のため、家族のため、責務を果たすために、自分自身の困難に誠実に向き合う王の姿は感動的。
と言っても、常に前向きなんじゃなくて、どちらかと言うと、逃げ出したり、弱音を吐いたり、諦めたりする姿が描かれていて、それでも!というところに勇気づけられる…。
「人は見た目が7割」というけれど、言葉はその内容より、発言しているときの仕草や言い方で印象が決まってしまうんだとか。そういう意味でヒトラーとの対比はうまいなあと思いました。片方は自分の信念を自分の言葉で力強く主張し、一方は用意された原稿を他人の演出に従って詰まりながら読み上げる。こう書くと前者の演説が優れていると思えるけれど、その言葉がもたらした結果は歴史が示す通りなんですよね。
戴冠式の録画の直後にナチスドイツの謁兵記録が入っているのはちょっと不思議な感じがしました(笑)。この時代に映像の編集ができるなんて、大主教はオタクだったんですかね?