箪笥のなか

箪笥のなか
 同じく「野性時代」7月号第二特集「男子禁制!?女子のためのファノベ特集」のブックガイドより。
 今住んでいる部屋は狭いので、箪笥は絶対置かないぞ、と心に決めているのですが、モティーフとしては好きなんですよね。半村良の傑作短編「箪笥」や、話の全体は思い出せませんが、箪笥の引出しをあけると水田が広がっていたというような昔話があって、ナルニア国の洋服箪笥とはまた違った、日本独特のちょっと怖い異世界の入り口のような気がします。
 本作は、もののけを呼ぶ箪笥と、不思議なものを視る弟をめぐるお話。長野まゆみさんは、初期のころはともかく、最近は雰囲気文学すぎて、ついていけません。明快な起承転結がないので、とらえどころがないのが読みにくさの原因かなあ。ところどころ、視覚的にはっとする表現があるので、読み方さえ分かれば、すごく面白いんじゃないかと思うのですが…。