ペンギン・ハイウェイ

ペンギン・ハイウェイ
 京都も大学生も出てこない、森見登美彦の新境地。
 「ぼくはまだ小学校の四年生だが、もう大人に負けないほどいろいろなことを知っている。」という主人公のアオヤマ君と、友達のウチダ君、チェスの強いハマモトさん、腕力少年のスズキ君という顔ぶれと、彼らの日常見ていると、吉野朔美の『ぼくだけが知っている』が思い浮かびます。
 少年たちの冒険と、淡い初恋、そして町を巻き込む不思議な現象、と題材は面白かったのですが、なんとなくものたりない…。…具体性に欠けるというか、手ごたえがない? 描かれている郊外の町や、重要なキーアイテムであるペンギンに、現実感がないように感じました。京都の町はあんなに鮮やかに描けるのに。いや、これは、私が京都に住んでいるからで、郊外に住んでいる人にはリアリティがあるのかもしれないな。
 今回はピンときませんでしたが、好きな作家が新境地にチャレンジするのは、大歓迎です。