ゲゲゲの女房「消えた紙芝居」「父の上京」

 イタチが出てきて、またインチキ商法をでっちあげるのかと思ったら、意外と「いい人」の役回りでした。せっかく茂に忠告するも、信頼度の低さからあっさり追い払われちゃってましたね。ねずみ男のよさは、<こすい・せこい・ずるい>:<ちょっといいやつ>の割合が95:5くらいにあると思うので、もうちょっとにぎやかにかきまわしてくれてもいいのよ…。でも、茂もつぶやいてましたが、一つの産業が滅びるってのは、恐ろしいものですね。
 太一少年のコイバナが、どういうふうに物語に絡むのかと思ったら、こう来たかー。いろんな伏線が、子どもを思う親の心、というテーマにきれいに収束していった土曜日でした。途中までは、ほとんど太一君に同調して、こみち書房のおかみさんのお節介を、うざったいなー、余計な御世話だよなー、と思ってたんですが、「でも無理なの…」で声をあげて泣き伏したところで、がらっとひっくり返されました。あそこの松坂慶子の演技が素晴らしくって、それまで頑なだった太一の心が溶けていくのに、十分な説得力を持たせていたと思います。
ああいう場合は、茂の言うとおり、ほっとくのが一番だと思うんですが、でも、太一の心情を慮って、ほうっておいてなお、太一を支えていくためには、彼のすぐそばにいることが不可欠なんですよね。一緒に暮らしているわけではない、こみち書房のおかみさんや布美枝が、「あなたは一人じゃないんだよ」と伝えるには、お節介をやくしかなかった。みんながみんな、あの時太一君を「ほうって」おいてしまったら、彼は孤独の中でさらにすさむしかなかったでしょう。でも、塞いでいるときにああいう言葉をかけられても、素直に嬉しくは思えないわけで、どうにもこうにもならなくなっていた太一君をこみち書房まで引っ張っていって、他人の存在に気が付くきっかけを作った布美枝さんは、さすがに主人公だったと思います。
お父さんに、「うちの人は、ほんものの漫画家ですけん!」と言い切ったところは、ニヨニヨしてしまいました。