出世花

出世花 (祥伝社文庫)
 「えん」は、芯が強くてけなげな典型的な逆境のヒロインだなあ。あんまり「いい子」なもんで、最初は、正直やや引いて見てしまってたんだけど、たびたび桜花堂の桜最中をおいしそうに頬張るのを見ていたら、その辺にいる普通の娘さんと同じ愛嬌が出てきた。こういうちょっとした癖や嗜好で、登場人物のイメージって変わるものだ。
 江戸時代の「おくりびと」のあり方など、トリビア的なおもしろさもあった。このまま、愛する人の「死」をめぐる人情もので落ち着くのかと思っていたら、えんが遺体を見てきた経験を生かして犯罪捜査に協力するというミステリー的な展開になってきて、その方向もあったかと目からウロコ。捕り物帳っぽい感じで続編が出ないかと思うけど、資料とか調べるのが大変そうだー。