六本指のゴルトベルグ

六本指のゴルトベルク
 多指症だったレクター博士の弾くゴルトベルグはどんな音色だったのか? 内外のミステリーに登場する曲や人物を、プロの音楽家の視点で論じたエッセイ。著者自身がピアニストなだけあって、英才教育を施された音楽家の突出した能力や変人ぶりのエピソードが満載でした。無趣味の私には、何もかも捧げて熱中した果てにある境地というのは想像もできないのですが、フィクションに描かれるその感覚が、音楽家から見ても「そうそう、あるある」と言えるものなんだということが分かって、あらためて小説家というのはすごいなと思いました。