156・157ふたごの兄弟の物語上・下

ふたごの兄弟の物語〈上〉 (岩波少年文庫) ふたごの兄弟の物語〈下〉 (岩波少年文庫) 
 バイヌーの靴屋に、そっくりなふたごの兄弟ジャコモとラウレンゾーが生まれます。やがて両親が亡くなり、ふたり一緒に働ける職を探しますが、見つかりません。そこでふたりは職探しの旅に出ますが、分かれ道に建っていた小屋の主人に諭されて、1年後に再会することを約束して別々の道を選びます。その後、ラウレンゾーは堅実な貴金属細工師、ジャコモはどろぼうの親方に弟子入します。ふたりはそれぞれの親方の元で修行に励み、すぐれた技を身につけますが…。
 ふたごがそっくりであることで、しょっちゅうややこしいことになりますが、常にふたごであることを利用して上手く解決していきます。ややもすれば単調になりそうな設定に、様々なバリエーションを加えて、ふたごが一人前になるまでの大きなストーリーに仕上げてある所が上手いです。
 グリムなどの昔話や著名なおとぎ話を下敷きにしていて、元ネタにどんな変化を加えているかも読みどころの一つです。例えば、運試しに出かけた兄弟のひとりがどろぼうの技を身につけるという話は、グリムにあります。ただ、グリム童話では、どろぼうという職種に対する罪悪感とかはないんですよね。でも、ジャコモは、どろぼうにはなりたくない、でも親切にしてくれた親方には恩義があるし…と悩みます。こういうところが昔話との相違点で、この物語のおもしろいところだと思いました。
 ジャコモの師匠であるどろぼうのヤヌスが、憎めなくていいキャラクターでした。なので「宿屋妖精の客」で後日談があって嬉しかったです。