妙なる技の乙女たち

妙なる技の乙女たち
「天上のデザイナー」「港のタクシー艇長(スキッパー)」「楽園の島、売ります」「セハット・デイケア保育日誌」「Life me to the Moon」「あなたに捧げる、この腕を」「the Lifestyles Human-beings At Space」
 軌道エレベーターの城下町リンガ(ずいぶん意味深な町の名前だ)で働く、様々な職種の女性たちが主人公の短編集。登場人物は、友人や血縁として他の短編に名前が出てきたりして、ゆるやかに繋がっています。表紙は、見覚えのある名前…と思ったら、「どろ高」の人でびっくり。
 軌道エレベーターに関わって、様々な仕事が生まれる可能性を丹念に描いているところがとても面白かったです。SFはこういう思考実験みたいなことができるところが魅力だと思うので。不動産を扱った「楽園の島、売ります」は、ビジュアルの美しさと、契約の駆け引きの緊張感で、引き込まれました。
 軌道エレベーターにはじめて乗った新米アテンダントとともに、宇宙へ運ばれる体験ができる「Life me to the Moon」が一番わくわくしました。私もミグエル・アビディンと同じで、ロケットは怖いですが、軌道エレベーターには乗ってみたい。主役の犬井さんは、アテンダントのプロながら、自分の行いが他者からどう見えるかということに気がつかないようなちょっと抜けているところが微笑ましいです。私はすっかり主人公は腹に一物あると思っていたので、最後は拍子抜けしました。