青い鳥

青い鳥
 「ハンカチ」「ひむりーる独唱」「おまもり」「青い鳥」「静かな楽隊」「拝啓ねずみ大王さま」「進路は北へ」「カッコウの卵」
 ラストまで読めば「泣ける」感動ものと言えなくもないけれども、途中までは、私には吐きたくなるくらい気持ち悪くて後味の悪いものだった。日本という閉塞した社会の、さらに窒息しそうな学校社会で、傷つき、傷つけ、苦しみもがく中学生の姿を見るのはいたたまれない。あいにくと、ここまで繊細じゃないもので、どう考えても自分は、彼らを無神経に追い詰める立場の人間だからだ。この作者が上手いと思うのは、そういう真実らしい息苦しさを描くとともに、吃音の臨時講師村内先生という理想化された登場人物を、彼ら彼女らに寄り添わせていることだ。この短編集は、生徒のそばに「ただ一緒にいる」ために学校に現れる村内先生という「光」があることによって、「読まれる」ためのエンターテイメント性を保持している。ただ、私はどんどん「光」が強くなる後半より、村内先生の救いがまだ期待できなかったどっ暗い前半部分の方になぜか気を惹かれてしまう(…ただし、村内先生の存在がなければ、あまりに暗すぎて読み通すのはつらいので、後半がダメだと言ってるわけではありません)。