ミス・ポターの夢をあきらめない人生

“ピーターラビット”の生みの親ミス・ポターの夢をあきらめない人生

“ピーターラビット”の生みの親ミス・ポターの夢をあきらめない人生

 映画「ミス・ポター」は、ピーターラビット誕生と、婚約者とのロマンスに焦点を絞ったものだと再確認。ビアトリクス・ポターは、絵本作家になる前は、菌類学者を目指していて、しかし当時の学会では女性の研究は全く認められずに挫折していました。この辺を書くとフェミニズムっぽくなって別の面白さが出たと思う。あとは、頑なな母親に対する盟友ともいうべき弟との絆もかなり面白い。飼っていたコウモリの世話に困った姉に相談されて、「ではきれいに剥製にしてください」などと寄宿舎から返事を書く弟も弟だが、本当に自分の手で剥製を作ってしまう姉も姉。ビアトリクスが動物を愛する一方で、ある種科学的・客観的な視点を持ち続けたところは好印象だった。弟は、映画ではワイン商の娘と駆け落ちしたとなってたと思うのだけど(この出典はなんなんだろう)、実際は農家のメイドとスコットランドで秘密に結婚していたらしい。ビアトリクスがウィリアム・ヒーリスとの結婚に反対されたとき、自分の結婚をばらして姉に味方してくれたとか。この辺がよく分らないのだけど、11年間、両親との交流を持ちつつ、隠し通してたってことだろうか。それとも音信不通だったところに、いきなり現れたんだろうか。髪型がすごいインパクトあったお父さんとは、本当に仲がよかったらしい。
 伝記には、書く対象の人物への深い尊敬とともに、客観性が求められると思うけど、この作品にはそれが少し弱い。あと、ビアトリクスの生き方が女性の理想みたいとらえてるところがあるのも息苦しい。もうすこし、ドライな伝記も読んでみたいな…福音館の『ビアトリクス・ポター (福音館の単行本)』とか。