赤朽葉家の伝説

赤朽葉家の伝説

赤朽葉家の伝説

 「辺境の人」の裔であり、千里眼である赤朽葉万葉が本編の主人公だと思うのだけど、「スケバン刑事」かっと思わずつっこんでしまった豪快な母赤朽葉毛毬の章が一番面白かったな。手が届きそうで微妙に自分の子どもの頃と時代がずれているからだろうか。それにしても、ほんとにこんなんだったんだろうか。漫画のシチュエーションとしか思ってなかったんだけど。
 祖母、母の二人の個性が強烈なので、なにものでもない赤朽葉瞳子の、殺人者まつわるエピソードが弱くなるのは仕方がないか。仕掛けそのものは上手いなあと思ったので、一番最初に語り始めるときに、殺人者である祖母、赤朽葉万葉と紹介しておけば、物語全体がミステリーとして引き締まったかもしれない。瞳子が祖母の告白を聞いても、本気にしないとかね。前の2章で赤朽葉家の重厚な雰囲気にどっぷり浸っていた読者にすると、話がいきなり探偵小説になるので、どうしても唐突な感じがするのがちょっぴり残念だった。いや、でも桜庭一樹、すきです。