幽霊

幽霊

幽霊

「カーフォル」「祈りの侯爵夫人」「ジョーンズ氏」「小間使いを呼ぶベル」「柘榴の種」「ホルバインにならって」「万霊節「付『ゴースト』序文」
 読み始めると30行くらいでがっくがっく眠ってしまうので、2週間もかかってしまった。主人公がある場所を訪れて幽霊を目撃し、その後土地の人や古文書からその幽霊にまつわる話を聞く…という構造はどこか夢幻能に似ている(だから眠くなるわけでもなかろうが…)。
 著者は、『ゴースト』序文で、幽霊は見るか見ないかではない。「幽霊を感じる人(ゴースト・フィーラー)」であるか否かが重要なのだと説いています。その言葉通り、小説中にゴーストは、派手な登場はしません、主人公が恐怖に総毛立つことはなく、それを幽霊とも思わずに幽霊を見、あとでじわじわとこの世ならぬものの雰囲気を感じ取ってぞっとします。それは読者も同じことで、上品で淡々とした行間から、不気味に立ち上ってくる霊界の気を感じとれるか否かで、評価は全く変わってくるでしょう。私は『感じる人』ではないので、ぐうぐう眠ってしまいましたが、大変好きではあるので、その雰囲気に浸りたくて最後まで読み通したのでした。
 メイド・ゴースト・ストーリーともいうべき「小間使いを呼ぶベル」は、昨今流行のヴィクトリアン・エドワーディアンには必見だと思います。