なまくら
- 作者: 吉橋通夫,佐藤真紀子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/06/11
- メディア: 単行本
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「つ」の字、なまくら、灰、チョボイチ、車引き、赤い番がさ、どろん
幕末の京都に生きる少年達を描いた短編集。「バッテリー」の佐藤真紀子装画の表紙は、気になってはいたのですが、読んで正解でした。時代小説の人情味とか、下町に生きる人々の生活感とか好きな人は、ヤングと思って見過ごすのはもったいないですよー!
時代小説でヤングアダルトというのは、大変珍しいように思います。YA!ENTERTAINMENTシリーズの中でもかなり異色作。
鮮魚を運ぶ「走り」、砥石の「運び人」、灰を集めて卸す「灰買い」、舟引、車夫、古着屋、煉瓦職人と、少年達の仕事の様子を見ているだけで興味深いのですが、そこに恋や友情、家族との葛藤、嘘や罪悪感など様々な感情がじっくり描かれていて、ぐいぐい読み進んでしまいました。主人公は、みな肉体労働に携わる少年で、病気やけがで身体をこわせば、あっという間に生活が立ちゆかなくなる社会の底辺層に生きています。身体を壊さなくても、仕事はどれも大変にハードなもので、そこに楽して儲けようという悪への誘惑が常に側にある。そういう非常な緊張感が作品全体をびしっと引き締めていて、この作者がヤングアダルトというジャンルに時代小説という手法を持ってきたのは必然だったのだと思いました。