文学少女と飢え渇く幽霊

”文学少女”と飢え渇く幽霊 (ファミ通文庫)

”文学少女”と飢え渇く幽霊 (ファミ通文庫)

 「あなたたち、少しは他人を思いやりなさい、一呼吸置いて冷静になりなさい、世間に出て視野を広げなさいって、本に顔をつっこんで叫びたくなるわ」(p.268)
 まったく。
 出てくる高校生が(だけでなく、大人も)、視野狭窄かつ自意識過剰で、どうしようかと思いました。特に主人公の少年! 冒頭からいきなりいったいあんたは何様だって感じで、ページを閉じたくなりました。遠子先輩だけが「間違いを犯す名探偵」として、もっとも冷静に、客観的に、余裕を持って、あまりにも十代なこの物語におけるバラストの役目を果たしていて、なんとか読み終えられたのでした。しかし、遠子先輩のグルメ談義を聞くと、ぜひ読んでみたくなりますね。
 この物語に出てくる人びとを示すぴったりな言葉が、ネット上で発明されています。こういううまい言葉を思いつく人を私は尊敬するけれど、でもこの言葉を使ってしまったら、何か大事なものをさくっと落としてしまいそうなので、怖くて使えないのでした。