鬼仙

鬼仙

鬼仙

 岡本綺堂田中貢太郎の伝統を継ぐ志怪短編小説集。
 宋代の紫州という土地を舞台に役人、導士などの人間や幽霊、狐がいかにもふつーに一緒に暮らしている雰囲気がいい。
 とりわけて怪異の起きるわけではない「小琴の火鍋」に、ほっこりと心温まる。『沈夫人の料理人』を彷彿とさせるおいしそうな料理のオンパレードで、その料理に人々の心の綾が載せられているところがよかった。ブラックユーモア満載の「犬と観音」のような話も好き。ひどい話なんだけど、どっかカラッと明るいんだよね。