105さすらいの孤児ラスムス

さすらいの孤児ラスムス (岩波少年文庫)

さすらいの孤児ラスムス (岩波少年文庫)

 苦手なのか好きなのかよく分からなくなってきたリンドグレーン。ファンタジーも書けばナンセンスも手がけ、冒険小説もお手の物という、実に芸風の広い作家であると感心します。
 孤児の家を逃げ出した9歳のラスムス少年は、風来坊のオスカルと出会い、アコーディオンの角付けをしながら旅をします。ところが、ある家で強盗事件にでくわし、濡れ衣を着せられた二人は犯人と警察の両方から追われる身になるのでした。
 子どもに厳しいヒョーク先生も、浮浪者に偏見をもってる警察署長も、強盗犯のリーヴですら、ときおり優しさをのぞかせるのが印象的。人間ってその時々の気分によって親切に振る舞ったり、意地悪になったりするものだから、リーヴがラスムス少年に預かったお金よりたくさんのパンを買ってくるところなんか、とてもリアルに思えた

 「神様の本物のふざけ屋カッコウ鳥」には何か出典があるのかな。